先日、知人との会話の中で、
「前職で営業成績が社内でも上位だったという人が転職してきたが、2年度ほど経つが今の会社では蚊帳の外になっている営業マンがいる」
という話を聞きました。
私自身も小さな会社なら総務全般はできると転職しましたが、馴染めずにまた支援機関の仕事に戻りました。
なぜそのようなことになってしまうのか。
要因を整理しながら、転職後に成績が下がる可能性について考えてみました。
まず1つ目に、転職先の企業文化や営業プロセスが、前職とは大きく異なることが多いということです。
前職での成功が特定の営業スタイルやツールに依存していた場合、新しい環境に適応するまでに時間がかかることがあります。
たとえば、前職ではチームワーク重視の営業が主流だったが、転職先では個人の力量が強く求められるスタイルであれば、そのギャップがパフォーマンスに影響を与えます。
また、新しい業界や製品・サービスに関する知識が十分に習得されていない場合も、顧客に適切な提案ができず、結果的に営業成績が下がる要因となります。
2つ目は、営業成績は、売っている製品やサービス自体の強さにも大きく影響されます。
前職で扱っていた商品やサービスが市場で強力なブランド力を持っていた場合、それ自体が営業を成功に導く一因だった可能性があります。
逆に、転職先の製品やサービスがまだ市場で認知度が低い、あるいは競合が多い場合、営業マンがどれだけ努力しても顧客の関心を引くのは難しくなります。
つまり、「売りやすい」商品を扱っていたからこその成績だった場合、新しい環境での営業は一筋縄ではいかなくなるかもしれません。
3つ目に、営業成績が高かった人は、往々にして長年培ってきた顧客との信頼関係に依存していたことがあります。
転職をすると、その顧客基盤がゼロになり、新たに信頼を築く必要があります。
特にBtoBの営業では、顧客との長期的な関係構築が重要で、短期間では前職ほどの結果を出すのは難しいと考えられます。
転職先で新たな顧客を開拓するためのリードジェネレーションやネットワーキングがしっかりと整備されていない場合、営業マン個人の力だけでは補いきれないこともあります。
4つ目に、マーケットの違いも成績に大きな影響を与えます。
たとえば、前職が地方の中小企業向けの営業だったのに対し、転職先では都市部の大企業向けの営業をすることになった場合、ニーズや購買プロセスが大きく異なるため、これまでの営業スキルがそのまま通用しないケースもあります。
さらに、新しい職場の競合環境が前職よりも激しい場合、競争力を維持するためには、今まで以上に戦略的な営業活動が求められるでしょう。
5つ目に、転職は期待や不安を伴う大きなライフイベントです。
新しい職場に順応する過程でストレスを感じたり、思い描いていた環境と実際のギャップに直面することも珍しくありません。
これがモチベーションの低下やメンタルの疲弊を引き起こし、営業成績に悪影響を与えることも考えられます。
6つ目に、前職では十分な教育やサポート体制が整っており、営業マンの成績向上を支援していたかもしれません。
対して、新しい職場では、個人の自発性に依存したスタイルを採用している場合、教育体制やツールが不十分であることもあり得ます。
そのような環境で、自己成長が難しくなり成績が下がることがあります。
以上のようなことが考えられますが、事務職とし転職した私にも当てはまることは多くあると感じました。
個人の能力だけでなく、環境、商品、顧客基盤、マーケット、さらには心理的要因など、複合的な要素が絡み合っています。
したがって、転職後の成績低下を単なる「パフォーマンス不足」と見るのではなく、新しい環境への適応を支援することが企業にも求められているのではないかと思いました。