出戻り社員 2025.7.5

人材に関する仕事をしていると、最近「出戻り社員」という言葉を聞きました。

一度辞めた会社にまた就職するということです。

「一度辞めた会社にまた戻るの?」と思う人がいるかもしれませんが、「出戻り社員」が再び注目されている背景には、人材確保の難しさと、定着率向上への期待があります。

少子高齢化が進み、優秀な人材の獲得が年々難しくなる中、一度辞めた社員を再雇用する「出戻り」は、企業と本人の双方にとってメリットがあると見直され始めています。

出戻りの最大の強みは、即戦力であることです。

すでに企業文化や業務内容を知っているため、新入社員に比べて教育コストが抑えられ、短期間で戦力化できます。

さらに、離職期間中に別の職場で得たスキルや視点を持ち帰ることで、社内に新たな風を吹き込む効果もあります。

「他の会社を経験したうえで戻ってきた」という事実は、職場に対する信頼や理解がある証とも受け取られ、周囲からの信頼にもつながりやすいのです。

企業にとっては、出戻りを歓迎する姿勢を明確にすることで、社員に「ここに戻ってきてもいい」と安心感を与えることができます。

これは離職率の低下にも寄与します。

実際に、「また戻れる場所がある」と思えることが、退職時の精神的な負担を軽減し、退職理由が一時的なものであれば、再雇用の可能性を残すことにもなります。

柔軟な雇用の選択肢を示すことで、社員のキャリアパスを尊重する姿勢が企業文化として育ち、長期的な定着につながるのです。

もちろん、出戻りには課題もあります。

前回の退職理由が解消されていない場合、同じ問題が再燃する可能性があり、双方の信頼関係が損なわれかねません。

また、周囲の社員との温度差や、不公平感が生じるケースもあります。

これらを避けるには、再雇用時に丁寧な対話と合意形成が欠かせません。

なぜ戻りたいのか、会社としてどう受け入れるのか、役割や期待値を明確にすることが重要です。

出戻りという選択は、働き方が多様化する今だからこそ価値があるのではないでしょうか。

「一度辞めたら終わり」ではなく、「また一緒に働ける可能性がある」という柔軟な関係性が、組織の強さと持続性を支える要素になっていくはずです。