試験前の心理と対策 2025.7.12

試験が近づくと、本来集中すべき勉強以外のことに手を出してしまう。

たとえば部屋の掃除を始めたり、普段見ない動画を見続けたり、急に趣味に没頭したくなる。

こうした行動は、「逃避行動」や「セルフハンディキャッピング」と呼ばれる心理現象が背景にあるとされています。

逃避行動とは、不安やプレッシャーを感じたときに、それを回避するために別の行動に意識を向けることです。

試験前は「もし失敗したらどうしよう」「覚えたはずなのに自信がない」といった不安が高まりやすく、脳はそれを軽減しようと無意識に快適な活動へと向かいます。

掃除やネットサーフィンは、短期的に安心感や達成感が得られるため、ついそちらに引き込まれてしまうのです。

また、セルフハンディキャッピングとは、あえて自分のパフォーマンスを妨げるような行動をとることで、結果が悪かったときの言い訳を無意識に用意する心理です。

つまり、「直前にちゃんと勉強しなかったから点が取れなかった」と思えるようにして、実力の不足を直視せずに済むようにする防衛本能ともいえます。自分を傷つけたくない気持ちが、逆に足を引っ張るという矛盾した状態です。

では、こうした心理をどう改善すればよいのでしょうか。

まずは「完璧にやらねばならない」という思い込みを手放すことが効果的です。

完璧主義はプレッシャーを増幅させ、不安を強めて逃避行動を引き起こします。

「今の自分にできる範囲でベストを尽くせばいい」と考えることで、心の負担を軽減できます。

次に、「行動を小さく区切る」ことも有効です。

「問題集を1冊やり切る」より「10分で1ページやる」といったように、ハードルを下げることで、勉強に対する心理的な抵抗感を減らすことができます。

手をつけさえすれば、自然と集中状態に入りやすくなります。

さらに、「勉強以外の行動を意図的に時間で区切る」のもおすすめです。

たとえば「30分間だけ掃除して、終わったら必ず机に向かう」とルール化することで、逃避行動がだらだらと長引くことを防げます。

行動を「ごほうび」にするような発想も効果的です。

試験前に他のことをやってしまうのは、多くの人に共通する自然な心理です。それを責めるよりも、まず自分の不安やプレッシャーに気づき、少しずつ対処していくことが、前向きな結果につながります。

大切なのは、自分をうまく扱う「心理的な戦略」を持つことなのです。