試験が近づくと、本来集中すべき勉強以外のことに手を出してしまう。
たとえば部屋の掃除を始めたり、普段見ない動画を見続けたり、急に趣味に没頭したくなる。
こうした行動は、「逃避行動」や「セルフハンディキャッピング」と呼ばれる心理現象が背景にあるとされています。
逃避行動とは、不安やプレッシャーを感じたときに、それを回避するために別の行動に意識を向けることです。
試験前は「もし失敗したらどうしよう」「覚えたはずなのに自信がない」といった不安が高まりやすく、脳はそれを軽減しようと無意識に快適な活動へと向かいます。
掃除やネットサーフィンは、短期的に安心感や達成感が得られるため、ついそちらに引き込まれてしまうのです。
また、セルフハンディキャッピングとは、あえて自分のパフォーマンスを妨げるような行動をとることで、結果が悪かったときの言い訳を無意識に用意する心理です。
つまり、「直前にちゃんと勉強しなかったから点が取れなかった」と思えるようにして、実力の不足を直視せずに済むようにする防衛本能ともいえます。自分を傷つけたくない気持ちが、逆に足を引っ張るという矛盾した状態です。
では、こうした心理をどう改善すればよいのでしょうか。
まずは「完璧にやらねばならない」という思い込みを手放すことが効果的です。
完璧主義はプレッシャーを増幅させ、不安を強めて逃避行動を引き起こします。
「今の自分にできる範囲でベストを尽くせばいい」と考えることで、心の負担を軽減できます。
次に、「行動を小さく区切る」ことも有効です。
「問題集を1冊やり切る」より「10分で1ページやる」といったように、ハードルを下げることで、勉強に対する心理的な抵抗感を減らすことができます。
手をつけさえすれば、自然と集中状態に入りやすくなります。
さらに、「勉強以外の行動を意図的に時間で区切る」のもおすすめです。
たとえば「30分間だけ掃除して、終わったら必ず机に向かう」とルール化することで、逃避行動がだらだらと長引くことを防げます。
行動を「ごほうび」にするような発想も効果的です。
試験前に他のことをやってしまうのは、多くの人に共通する自然な心理です。それを責めるよりも、まず自分の不安やプレッシャーに気づき、少しずつ対処していくことが、前向きな結果につながります。
大切なのは、自分をうまく扱う「心理的な戦略」を持つことなのです。