資格試験を目前に控えると、多くの受験生は不思議な心境の揺れを経験します。
合格の手ごたえを感じられるときには、「一刻も早く試験が終わって欲しい」と願い、逆に準備不足を痛感しているときには、「もっと時間が欲しい」と焦りを覚える。
これは単なる気分の違いではなく、心理的な余裕や自己効力感の差が表れているのだと考えられます。
十分な勉強を積み重ねてきた受験生は、知識が整理されており、試験問題に対してもある程度の見通しが立っています。
そのため「早く解き終えて楽になりたい」「もう待つ時間がもったいない」と感じやすいのです。
このとき、試験そのものが不安の対象ではなく、むしろ解放をもたらすゴールとして意識されるため、「早く終わらせたい」という前向きな心境になります。
一方、準備が不十分だと感じる場合には、試験日が近づくほど「まだできていない部分がある」「今からでも何とか追い込みたい」という思いが募ります。
そのため「あと1週間でも伸びてくれたら…」と、試験開始を先延ばしにしたくなる心境が生まれるのです。
このとき、試験はゴールではなく恐怖の対象になり、早く終わって欲しいとは到底思えません。
興味深いのは、いずれの心境でも「試験」という事実は変わらないのに、捉え方次第で心の持ち方が大きく変わる点です。
つまり、試験は客観的な出来事ですが、それに対する主観的な準備度合いが気持ちを決定づけています。
人は「自分でコントロールできる」と感じられると前向きになり、「コントロールできない」と感じると逃げたくなる、という心理の典型例といえるでしょう。
こうした心境の揺れをうまく利用する方法もあります。
例えば、十分に勉強した人は「早く終わりたい」という気持ちを自信の証として受け止めれば、落ち着いて試験に臨むことができます。
また、不安を感じる人も「まだ終わって欲しくない」と思う自分を責めるのではなく、「それだけ学びに余地がある」という現実を冷静に受け止め、残り時間を効率的に使うことが大切です。
資格試験における直前の心境は、合格の可能性を映す鏡のようなものかもしれません。
その心境を理解し、自分自身の状態を客観視できるようになると、試験勉強の計画や心の準備にも役立ちます。
最終的に「早く試験が終わってすっきりしたい」と思える自分にたどり着けるかどうかが、学びの積み重ねの成果を示す一つの目安と言えるでしょう。