専門職大学院が広げる学び直しの可能性 2025.11.8

近年、社会や産業の変化がますます速くなる中で、「実践的に学ぶ大学院」として注目されているのが専門職大学院です。

専門職大学院は、研究者を育てる一般的な大学院とは異なり、実務に直結する知識やスキルを体系的に学び、現場で活躍できる人材を育てることを目的としています。たとえば、経営を学ぶMBA(経営管理修士)、弁護士を目指す法科大学院、会計士を養成する会計専門職大学院などがその代表例です。

専門職大学院の大きな特徴は、「理論」と「実務」を結びつけて学べる点です。

講義では、専門分野の理論を学ぶだけでなく、実際の企業や現場の事例をもとにしたケーススタディや実地演習が行われます。

教員には大学の研究者だけでなく、企業経営者や実務家など、現場経験の豊富な専門家が多く参加しており、現実の課題を踏まえた実践的な授業を受けることができます。

さらに、社会人でも学びやすいようにカリキュラムが工夫されているのも魅力です。

夜間や週末、オンラインで受講できるコースを設けている大学院が多く、仕事を続けながら学位を取得することも可能です。

こうした柔軟な学びの環境は、「人生100年時代」におけるリカレント教育(学び直し)の場としても注目されています。

特に、AIやデジタル技術が急速に発展する今、社会人がスキルを更新し続けることは欠かせません。

その意味でも、専門職大学院は新しい時代の学びの拠点といえるでしょう。

一方で、課題もあります。

理論と実務の両立をどう実現するか、教育の質をどのように保つか、そして卒業後のキャリア支援をどれだけ充実させられるかといった点です。

日本ではまだ、実務教育の評価が欧米ほど高くはありません。

学びを通じて得た知識やスキルが、職場でどう生かされるかを社会全体で理解していくことが求められます。

それでも、専門職大学院の意義は今後さらに高まっていくと思われます。

変化の激しい時代だからこそ、理論だけでなく「現場で使える知恵」を持つ人材が必要です。

さまざまな業界の社会人が集まり、互いの経験を共有しながら学び合う環境は、新しい発想やネットワークを生み出します。学位という結果よりも、その過程で培われる洞察力や課題解決力こそが、人生や仕事を支える大きな力になるのです。

専門職大学院は、社会に開かれた「学びの実験場」といえるでしょう。

学び直しを通じて自分を成長させたい人や、新しいキャリアを築きたい人にとって、その門戸は大きく開かれています。