学びは引き算で深まる 2025.12.6

 

私たちは「学ぶとは、知識を増やすこと」と考えがちです。

しかし、現代のように情報があふれる時代では、ただ知識を積み上げるだけでは、逆に学びの本質から遠ざかってしまうことがあります。

情報が多すぎる社会では、必要のない知識をどれだけ手放せるか、何に集中するかを決められる人ほど、学びを深めていけるのです。

私はこれを「引き算の学び」と呼びたいと思います。

私たちの日常には、ニュース、SNS、本、動画、メルマガなど、無数の情報が流れ続けています。

一見ありがたい環境ですが、その反面「何を学ぶべきか分からない」「学んでいるはずが身についていない」という悩みが生まれます。多くの知識が頭の中に散乱し、どれも自分の中に定着しない状態です。

これは、机の上に大量の資料が積み上がっているのと似ています。

資料そのものは価値がありますが、整理されていなければ必要な情報を取り出せません。

むしろ、余計なものが多いほど大切なポイントが見えなくなります。

現代の学びに必要なのは、知識を増やすことよりも、「取捨選択する力」を鍛えることだといえるでしょう。

では、どうすれば引き算の学びができるのでしょうか。

まず大切なのは、「学ぶテーマを一つに絞る」ことです。

人間の脳は、複数のテーマを同時に深く理解できるほど器用ではありません。

英語、経営、心理学、投資——どれも興味があっても、同時に並行すると浅く広い学びで終わってしまいます。

あえて、今月はこの一テーマだけ学ぶ、と決めるだけで、学びの質は驚くほど変わります。

次に重要なのは、「足さない勇気」です。勉強していると、新しい本や講座をどんどん追加したくなります。

しかし、知識は増やせばいいというものではなく、むしろ一定期間は情報を制限することで、理解が深まり、自分の言葉で語れるようになります。

学びは料理のようなものです。

材料を入れすぎると味がぼやけるように、情報を詰め込みすぎると、何を学んでいるのか分からなくなります。

さらに「学んだことを捨てる」ことも、学びの本質に近づく行為です。

学んだけれど使わない知識は、一度脇に置いてしまって構いません。

必要なときにまた取り出せば良いし、思い切って削れば、頭の中に余裕が生まれ、本当に大切な学びが際立ちます。

学びとは、知識を抱え込むことではなく、自分にとって必要な知恵を選び抜くプロセスなのです。

「引き算の学び」ができるようになると、生活にも変化が起きます。

集中力は高まり、決断も速くなり、学んだことが仕事や人生に生かされやすくなります。

学びが深くなるだけでなく、シンプルで豊かな生き方にもつながるのです。

情報過多の時代だからこそ、あえて削る。

足し算ではなく引き算で学ぶ。

それが、これからの学びの新しい姿勢ではないでしょうか。