日本の社会人の一日の平均勉強時間はわずか7分という調査結果があります。
また、25歳以上の学び直し(リカレント教育)の参加率は2.6%にとどまり、OECD(経済協力開発機構)平均の16%を大きく下回っています。
仕事や家庭が忙しいことを理由に挙げる人は多いのですが、それだけではこの大きな差を説明しきれません。
大きな要因の一つは、「学校を卒業すれば学びは終わり」という意識が日本社会に根強く残っていることです。
日本では新卒一括採用や年功序列を前提とした雇用慣行が長く続いてきました。
その結果、入社までの学歴や新卒ブランドが重視され、社会人になってから主体的に学び続ける文化が育ちにくい環境が形成されてきました。
二つ目の要因は、学んでも報われにくい評価制度の存在です。
資格取得やスキル向上が必ずしも昇進や賃金に直結しない企業も多く、「努力しても評価されない」という経験が学習意欲を低下させています。
成果よりも年次や社内調整力が重視されやすい職場では、自己投資が後回しにされがちです。
三つ目は、失敗を避ける傾向が強い社会風土です。
海外ではキャリアチェンジや学び直しが当たり前とされる一方、日本では転職や方向転換が「リスク」や「失敗」と捉えられやすい傾向があります。
学び直しは新たな挑戦への第一歩ですが、挑戦そのものに心理的な壁があると、行動にはつながりにくくなります。
さらに、何をどのように学べばよいのかを個人任せにしてきた点も課題です。
忙しい社会人にとって、学習内容の選択や計画作りは大きな負担になります。
企業や地域、行政による体系的な学習支援やキャリア相談体制が十分に整っていないことも、参加率が伸びない一因と言えるでしょう。
しかし、デジタル化や人手不足が進む現代において、学び直しは「余裕がある人の取り組み」ではなく、「働き続けるために必要な基盤」になりつつあります。
変化の激しい時代では、学ばないことそのものが大きなリスクになります。
今後求められるのは、個人の努力に任せるのではなく、学ぶ人が正当に評価され、挑戦が前向きに受け止められる社会環境づくりです。
社会人の学びを「特別な行動」から「当たり前の習慣」へと転換することが、日本の競争力と個人のキャリアの両方を支える重要な鍵となるでしょう。

