今回のコラムは私の知人より記事を投稿していただきました。彼女の華麗なる転身物語です。
私と彼女との出会いは十数年前。私がまだ20代前半の頃、ファイナンシャルプランナーの資格を取得して支部に所属したときに出会いました。お互いにファイナンシャルプランナーになったのは同じ時期で、彼女はファイナンシャルプランナーとして活躍されていました。
数年間、他の仲間と一緒に支部の活動に参加していましたが、支部長の交代と共に会う機会も少なくなりました。たまに仲間たちとメールなどで連絡するなかで、彼女がパン屋さんを開業するとの話を聞きました。
しばらくして、地域紙の紙面に彼女のパン屋さんの紹介記事が掲載され、私は早速彼女のお店を尋ねました。
住宅街にあるおしゃれなパン屋さん。昔と変わらない彼女が出迎えてくれました。ファイナンシャルプランナーからパン屋さん。思いもしない転身ですが立派なパン屋さんを開業されていました。朝早くから作るMatsumotopan。もちろん味は絶品です。午前中で売り切れることもあるそうです。
私も協会を立ち上げた旨を伝え、良ければコラムへ投稿いただけないかお願いしたところ、快諾していただき記事を送っていただきました。
前置きが長くなりましたが、そんな彼女がパン屋さんを開くまでの物語を原文のまま掲載させていただきます。
物語の中にも「学び」がキーワードとして出てきます。
~Matsumotopan開業物語~
信州豊南短期大学で17年間数学の教員をしていましたが、2009年から2年間ドイツのデュッセルドルフに住むこときなりました。
ドイツにはお米はなく、ドイツパンは黒くて酸っぱく固いパンばかりだったので、せめて日本で食べ慣れた白いパンが食べたくて、自分で焼いてみることにしました。
ドイツの小麦粉は日本の薄力粉、中力粉、強力粉という分類とは異なり、Type550, Type1050など番号が付いていたため、はじめは小麦粉を選ぶのすら四苦八苦。
毎晩ドイツ語を翻訳しながら調べているうちに、日本は小麦粉をグルテン含有量で分類し、ドイツはミネラル含有量で分類していることなどが分かってきました。
シンプルなパンは小麦粉と塩とお水があれば焼けるので、毎日少しずつ各量を変えながら試作を重ねました。理系の実験です。私には楽しい時間でした。
また、ドイツのキッチンには必ずと言っていいほどオーブンが設置されています。コンロがなくてもオーブンはあるので、パンを焼くのに困ることはありませんでした。
日本から来た方に会ったときに食事の話をすると、やはり多くが自宅でパン焼いていたので、いろいろ教えてもらったりしました。
日本に戻ってからは、世界中の食材のほとんどが安価に手に入る事に驚き、さまざまなバリエーションを試してみたくなるとともに、言語が通じるのだから体系的に学びたいという意欲が抑えられなくなり、大阪にある辻製菓専門学校に通信入学しました。
毎月DVDが送られてきて、課題のパンを焼いてレポートを書き、質問などにも親切に答えてもらえました。1年間のコースで、夏と春には各約1週間のスクーリングがあり、先生と仲間たちと一緒にパンを焼きました。
勤務先には4年ほど前から退職を伝え、その後、月に2〜3日都内のシェフやブーランジェリーが講師をする講座に通い、2018年3月31日に退職し、2018年5月1日にパン屋さんをオープンしました。
パン屋さんで修行したことはなく、ほとんど独学ですが、だからこそMatsumotopanにしかない天然酵母や国産小麦で焼けているのかもしれません。
Matsumotopan 長野県松本市桐1-4-53 TEL0263-33-1310 店主 細川ひとみ