悩みを人に聞いてもらって、スッキリした経験がある人は多いのではないでしょうか。
話を聞いてもらっても、気持ちをわかってもらっても、すぐに何かが変わるわけではありませんが、それが話し手に取って意味を持つことがあります。
「傾聴」にはどのような意味があるのでしょうか。
カウンセリングの礎を築いたと言われるロジャーズは、傾聴のことを次のように言っています。
「治療的な関係をしばらくの間経験したクライエントの変化は、セラピストの態度を反映したものになっていく。クライエントは相手が自分の感情に受容的に傾聴していることに気づくにつれて、少しずつ自分自身に耳を傾けるようになっていく」(ロジャーズ主要著作集3 ロジャーズが語る自己実現の道より)
分かりやすく言うと、肯定的なこと、否定的なこと、明確なこと、曖昧なことにも、カウンセラーがクライエントの心の動きに寄り添いながら丁寧に傾聴することで、
「自分自身の気持ちを聞く」
ことができるようになるということです。
自分自身の気持ちを聞くとは、自分自身の内側と向き合うことです。
人は自ずと回りに合わせようとして、
「こんなんじゃだめだ。もっと頑張らないと」
「もっとこうしなくては」
などと自分自身に言い聞かせようとします。
そのような自分でいる間は、人生は変わってはいきません。
しかし、ただただ、自分の気持ちを分かろうとして話を聴いてくれる人と一緒にいると、人は少しずつ自分と素直に向き合うようになります。
人から傾聴してもらっているうちに、自分の心の声を自ら聴くようになり、自分自身とのかかわりが変わってくるのです。
それが、その人の考え方を変えたり、見直すようになり、人生を変える一歩になるようになります。
相手から相談されると、それに対してアドバイスをしなくてはと考えたり、自己概念が強い人は、自分の考えを押し付けたりしてしまいます。
しかし、「聴く」ということだけでも、相手に変化をもたらすことができることだとと知っているだけで、話の聴き方も変わるものです。
友達や同僚などから相談されたときは、すぐに答えを出さず聴くことも大切かもしれません。
聴くことで相手自身が答えを導き出すこともあるからです。
ただ聴くだけですが、それが意外と大事なのです。