能力開発基本調査とは、
「能力開発基本調査は、我が国の企業、事業所及び労働者の能力開発の実態を正社員・正社員以外別に明らかにし、職業能力開発行政に資することを目的とする。」
として、毎年実施されているものです。
主な調査内容は、
(1) 企業調査
企業の概要、企業の教育訓練費用、従業員に対する能力開発の方針 等
(2) 事業所調査
事業所の概要、教育訓練の実施状況、人材育成、キャリア形成のための支援、職業能力評価の実施状況、技能継承 等
(3) 個人調査
OFF-JTの受講状況、自己啓発の実施状況、これからの職業生活設計 等
となっています。
この調査の中で、当協会として気になるデータがありましたので紹介します。
「企業調査」「事業所調査」「個人調査」について、分けてコラムを書きます。
今回は、「企業調査」について一部抜粋しコメントいたします。
①企業調査の「OFF-JT及び自己啓発支援に支出した費用」について
1)OFF-JTまたは自己啓発支援に費用を支出した企業の割合は57.5%である。
約半数以上の企業がOFF-JTや自己啓発支援に支出をしていることがわかりますが、40%近い企業がまだ取り組まれていません。会社の規模などにより取り組みが難しい部分があるかとは思いますが、今後はもう少し%が上がればよいと考えます。
2)支出した費用の労働者一人あたりの平均額は、OFF-JTは1.9万円(前回1.4万円)で前回より増加しており、自己啓発支援は0.3万円(前回0.3万円)と前回と同様であった。
OFF-JTは、外部機関へ委託などをして実施することが多いため、相対的に費用は高くなります。自己啓発支援は自身で取り組むことが多いとは思いますが、0.3万円は少ないように感じます。市販の本を買うくらいなら足りますが、仕事に必要なスキルを講座受講して学ぶとなると数万円はかかります。会社として自己啓発を進めているとしたら、もう少し支援が多くても良いのではないかと感じました。
②能力開発の考え方について
・能力開発の責任主体については、「企業主体で決定又はそれに近い」が、正社員77.4%、正社員以外66.0%であった。
・職業能力評価の処遇への関連付けは、関連付ける又はそれに近いが、正社員79.4%、正社員以外66.6%であった。
・教育訓練対象者の範囲は、全体重視又はそれに近いが、正社員58.6%、正社員以外53.3%であった
・OJTかOFF-JTかは、OJT重視又はそれに近いが正社員73.6%、正社員以外76.8%であった。
・教育訓練の実施方法の方針については、正社員は、社内を重視又はそれに近いが56.4%、正社員以外は70.1%であった。
企業調査であるため、能力開発の責任主体は企業が高くなっています。企業として能力開発の理解は進んでいます。しかしながら、それに伴う制度の導入や取り組みなどはまだまだ進んでいいないと感じています。会社として取り組む場合、社員としては「やらされている感」が出てしまうため、「評価や報酬」などが必要となります。
③教育訓練休暇制度及び教育訓練短時間勤務制度の導入状況について
1)教育訓練休暇制度は、「導入している」とする企業が8.5%である。
2)教育訓練短時間勤務制度は、「導入している」とする企業が6.4%である。
残念なことにこの制度についてはほとんど活用されていません。仕事が優先されるのは当たり前のことですが、制度を利用し、従業員が休んだ場合の代替要員の確保が困難との回答が多いです。また、従業員も仕事を休めないといった理由があるようです。
以上のように、企業としての能力開発は必要であると考える会社は多く、国としても制度や施策が作られていますが、それを使う環境が整っていないようにも感じます。言葉だけの「能力開発」ではなく、実際にやれるようにしなくてはなりません。
当協会としましても、国の制度や施策の周知に力を入れるとともに、企業の環境整備についても支援ができればと考えています。